最近の本の仕事について書いていきたい。
わざわざ、このブログを訪ねてくださったみなさんだ。本を出したねらいや見所を、ぜひ伝えておきたいと思っている。
まず、前にトークショーがあったと紹介した野村克也監督との対談本『再生力』(イースト・プレス刊)。私が、野村監督が南海ホークスで現役選手のときからずっと野村ファンだったことも、すでに書いた。
球界の太陽だった長嶋茂雄や王貞治に対して、野村さんは月見草といわれた。実は、自分でそう喩えたのだ。657本という球界第2位の偉大な本塁打記録を持つが、野村さんのホームランは長嶋や王とは違って、観客もまばらなスタンドに打ち込まれた。なにしろ、野村さんの高校野球部は夏の甲子園予選に毎年1回戦敗退という弱小チーム。南海にもテスト生として入団し、投球練習を受ける「壁」の役目しか期待されなかった。それがなぜ、4番を打つ強打者になり、世界の王に次ぐホームランを打つことができたのか?
私には長年、野村さんに聞きたいと思っていたことが山ほどあった。バッターへの「ささやき戦術」は、どんな言葉をブツブツつぶやいたのか? ID野球をはじめとする考える野球、頭を使う野球のルーツはどこにあるのか? 南海で選手兼監督になって以来、なぜ最下位チームの監督ばかり引き受けてきたのか? 「ダメ球団」の烙印を押された最下位チームを見事に再生させることができた秘訣は何なのか?
なかでも、なんとしても聞きたかったのは、個人や組織の「再生力」について野村克也さんがどのように考えているかだった。日本の政治、経済、社会が自信を失っている状況は、野村さんが引き受けては優勝に導いた最下位チームの選手たちが自信を失っていた状況に重なる。日本には、まさに「再生力」が必要なのだ。そのヒントを野村さんから得ようと思ったのである。
そんな私の問いかけに、野村さんは実にストレートに本音で応えてくれた。野村さんの話の最大の魅力は、つねに自分の経験や実践に基づくことしか言わず、評論家的な口ぶりを一切しないことだと思う。
だから私は、本のまえがきに「政治家や経営者、ビジネスマン、あるいはこれから進路を選ぶ学生、第二の人生を模索する熟年層といったみなさんにとって、得るところが大きいはずである」と書いた。そんな多くのみなさんに、ぜひ読んでいただきたいと思っている。