改革派官僚として活躍しながらも、経産省を退職した古賀茂明さんとの
本を先日、発刊した。
『決別!日本の病根』である。
このタイトルには、農協や医師会、電力業界といった既得権益者、
さらに経産省や官僚組織など、改革への歩みを阻む「日本の病根」と
「決別」しよう、という思いを込めた。
古賀さんが、日本中枢の崩壊を内側から告発して、霞ヶ関から
追い出されたのは、9月末のことだ。
ちょうどその頃、僕は古賀さんと何度も対談をした。
そのとき、僕と古賀さんは、原発事故のこと、経産省の問題、
公務員改革の顛末をこと細かく議論した。
そのなかで、僕が興味を持ったのは、古賀さんが主張する
「戦う成長戦略」である。
いまの政治は、昔ながらの「バラマキ」の成長戦略である。
公共事業をして、土建屋や不動産屋を儲けさせる。
それではダメとなったら、次は研究開発だといって
補助金のバラマキをした。
「マヤカシ」だから、いくらやっても成長するわけがない。
これに対して、古賀さんが主張しているのは、バラマキではない
成長戦略、「戦う成長戦略」である。
既存の業界、天下り機関と化した業界団体、官僚、族議員といった
「古い日本」と戦うべきだと。
たとえば、古賀さんは次のように提案する。
外資を利用して東北を復興しようと。
宮城県の村井知事は、漁業への企業参入を認めてほしいと言っている。
それなら、ノルウェーの漁業会社を誘致してはどうか。
三陸沖は世界有数の漁場である。
世界中の漁業会社が狙っている漁場だから喜んで来るだろう。
その代わりに漁港の整備をさせる。加工工場も作らせる。
漁船を失った日本の漁業従業者をたくさん雇うことも可能だ。
ノルウェーの会社が来れば、仙台との行き来が頻繁になり、
仙台空港から定期便が飛ぶようになって、空港周辺も栄える。
ノルウェーの人がたくさん来るから、街も賑やかになる。
津波のためにほとんどの漁港は壊滅している。
これらの漁港を以前のような小さな漁港にそのまま戻すのではなく、
機能を集約した大規模な漁港をつくる。
そうすれば、大型船舶が入れるようになる。
周辺施設を一体的に整備して、効率的な漁業を可能にする。
その資金やノウハウを持った外資の力を活用するのである。
さらに、三陸沖で獲れた魚は、半分はヨーロッパに持っていっていいが、
半分は日本国内で流通させる。
ヨーロッパで売るためには厳しい放射能検査が必要である。
そこで安全が証明されれば、EUのお墨付きが得られたということで、
日本の食卓でも安心して食べてもらえる。
いいことづくめである。
だが、漁協や農水族議員が反対するのは目に見えている。
だから、既得権益グループと戦わねばならない。
これが古賀さんの戦う成長戦略だ。
漁業だけではなく、農業でも医療でも電力でも同じだ。
どの業界でも戦わなければならない。
いままでの古賀さんの本では、ここまで踏み込んで語られてこなかった。
本書では、具体的な話もたくさん出てくる。
古賀さんと話をして、まだまだ希望はあると僕は思った。
多くの読者の方々にもこの本を読んでいただき、日本再生の可能性を
感じてもらいたいと思う。