年の瀬にあたり、今年一年を振り返り、2011年を総括しようと思う。
2011年でいちばん大きい事件はなんといっても東日本大震災だ。
地震と津波がたくさんの町を襲い、多くの人が亡くなった。
そして、福島の東電の原発事故。
僕も、原発というものは非常に危険なものだと思ってきた。
原子力発電とは何なのかをとことん追求した
『原子力戦争』という本を書いたのは、40年も前だ。
しかしながら、実際に事故が起きてこんな大変なことになるとは
予想していなかった。
おそらく今回の原発事故は、多くの人にとって、考え方を見直す
きっかけになったのではないか。
日本は明治時代になり、それまでの鎖国を解いて開国した。
開国とは、ヨーロッパの科学技術を取り入れることであった。
第二次世界大戦で負けてからは、今度はアメリカの技術を吸収した。
日本人の生活は豊かになり便利になった。
このように日本人は、科学技術の発展に対して疑問を持つことなく、
近代化を進めてきた。
ところが、今度の原発事故で科学の進歩発展というものを過信して
いたことが明らかになった。
科学技術の進歩発展について私たちは根本から考え直し、
これまでの生活を変えなければならなくなるかもしれない。
今年はまた、独裁政権が次々と崩壊した年でもあった。
チュニジア、エジプト、リビアといった長期の独裁政権下で
次々と革命が起きた。
この革命の原動力になったのがインターネットの普及である。
いままで既存のメディアは、独裁政権に弾圧されてきた。
独裁政権に取り込まれ、宣伝機関になったりもした。
ごく一部のプロが発信をして、国民は受信者にすぎなかった。
ところが、ネットが普及し、ツイッターやフェイスブックが
出てきたとき、みんなが発信者になった。
さまざまな情報がいち早く伝えられ、たくさんの意見が溢れ出した。
各地でデモが行なわれて、独裁政権が倒されたのである。
この一連の革命に対して、もっとも神経質になっているのは中国である。
中国の最大の問題は、国民が国のトップを選んでいないことだ。
そのような中国にとって、ネットの存在は脅威なのである。
一方、ギリシャに始まる経済破綻で、ヨーロッパが大きく揺れた年でもあった。
まだユーロが破綻するか、それとも決着するかわからない。
もしユーロが破綻したら、世界経済は大変なことになる。
日本も大ダメージを受けるだろう。
もうひとつ、年末になって北朝鮮の金正日総書記が亡くなった
というニュースも飛び込んできた。
2012年、日本はどうなるのか。
まずトップ交替の可能性がある。総選挙の可能性もあるだろう。
TPPという問題もある。
TPPはアメリカのアジア戦略である。
日本では関税がどうした、農業がどうしたと騒いでいるが、
アメリカがアジアの国々を取り込んで、中国を孤立化させる戦略である。
だから日本の交渉参加に、中国は慌てふためいた。
中国は、必死になって日本と組もうとしている。
日本は今後、大きな選択を迫られることになるだろう。
もうひとつ言っておきたいことがある。
26日、事故調査検証委員会が原発事故の中間報告を発表した。
僕は正直に言って、この報告は物足りなかった。
報告では、結局、今度の原発事故はヒューマンエラーだったと指摘している。
いってみれば管理の甘さであり、原発というものが危険かどうかについて
まったく触れていない。
少なくともこの報告では「脱原発」には結びつかないだろう。
委員会はあえて踏み込まなかったのか。
それともその能力がなかったのか。
実は僕は、中間報告が肩透かしになるのではと危惧していた。
委員会のメンバーに原発に詳しい人がいなかったからだ。
来年夏には最終報告が出るが、このままでは、脱原発と言っている
人たちは不満を感じることになるはずだ。
僕は原発事故の問題については、専門家だけではなく、
福島に住む人びとを交えて本音で話し合うべきだと思っている。
そこで元旦の「朝まで生テレビ!」は福島県から生放送をすることにした。
福島の復興をどうするか。
原発の事故処理をどうするか。
東電はどうなるか。
“フクシマ”をテーマに、福島の方々とともに現地で徹底討論する。
ぜひ、多くの人びとに議論に参加してほしいと思う。
今年一年間、お読みいただき、ありがとうございました。
来年がみんさんにとってよい年でありますように、
心よりお祈りいたします。