アメリカやヨーロッパでは連日、イランの核兵器開発疑惑がトップニュース扱いに
なっている。
国連の常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国は、イランに対してウラン濃縮を
進めている軍事施設に査察を受け入れるように要請したのである。
この核兵器開発疑惑に対して、イスラエルはイランを爆撃してもおかしくない
状況である。
もしイスラエルがイランを爆撃したら、イランはホルムズ海峡を封鎖するだろう。
日本は、原油の80%以上をペルシャ湾岸の国々から輸入している。
ホルムズ海峡が封鎖されると、日本は大打撃を受けることになる。
原油価格の高騰である。原油価格の高騰を引き金に円が暴落する恐れもある。
円が暴落すれば株価も暴落する。
ホルムズ海峡が封鎖されると、日本の経済が大ダメージを受ける、と財務省や
日銀は心配している。
こうした事態が起これば、野田政権にとって致命傷になるだろう。
野田首相はこれまで「消費税増税関連法案の成立に政治生命をかける」と述べてきた。
ところが、消費税問題などたちどころに吹っ飛んでしまう。
ほかにも懸案事項はある。ひとつは、東京電力の問題である。
東電の経営再建をめぐり政府が経営権を握れるかどうか、この3月から4月にかけて
大きな山場を迎える。
いま、政府・民主党と東電との間で熾烈な闘いが起きているのだ。
経産相の枝野幸男さんは、思い切った東電改革をしたいと考えている。
東電が強く抵抗しているのは言うまでもない。
それどころか、経産省は実は「反枝野」であり、経済界も東電側を支持しているの
である。
さらに、ここにきていくつかの週刊誌が、枝野さんと仙谷由人さんの批判記事を
書き始めた。
民主党内でも小沢グループが「枝野・仙谷叩き」をしている。
背景には、東電の思惑が働いているものと見られている。
もうひとつ問題がある。原発再稼働の問題である。
これも5月ごろまでには、何らかの方向性を示さなければならない。
これらの重要問題が持ち上がってくると、消費税増税問題は国民の意識の中から
薄れてしまうだろう。
そのため、9月に行われる民主党の代表選まで、消費税増税問題は先延ばし
されるかもしれない。
そのような読みが最近になって強まっているのである。
2月下旬、野田首相と自民党の谷垣禎一さんが、秘密裏に会談したという情報が流れた。
さらに3月上旬、副総理の岡田克也さんが自民党幹部と会談したと言われている。
ある情報筋によると、大島理森自民党副総裁がその相手だとのことである。
自民党に大連立を打診したというのである。
これらの会談は消費税問題を解決するためだろう。
国会では、自民党が反対している。
だが、本来なら自民党に反対する理由など何もない。
自民党は2010年の参院選で、消費税率を10%に引き上げると公約に掲げていた
のである。
にもかかわらず、いま自民党は反対している。
増税自体は反対ではないが、増税で得たお金の使い道に反対なのだという。
だが、本当の理由はさっぱりわからない。
自民党の反対理由が曖昧なので、民主党は話し合いで自民党の態度を変えられると思った。
だから野田さんも岡田さんも会談をしたのである。
こうした民主党内からも顰蹙を買いかねないことを、なぜやったか。
いま民主党は、大きく割れている。
野田首相と小沢一郎さんが対立し、小沢グループが消費税増税に全面的に反対している。
そして、ここにきて輿石東さんが、完全に小沢グループ側についてしまったのである。
そのため、先週あたりから野田首相は消費税増税関連法案を今国会に提出するものの、
採決しないのではないかと言われている。
輿石さんとしては、小沢グループに不利なことは避けたい。
小沢グループにとってもっとも不利なことは何か。
それは解散総選挙である。
選挙になれば、小沢グループに所属する多くの議員が、落選する可能性が高い。
議員数が急減してグループの力がなくなる。
さらに、もし民主党と自民党が連立することになれば、小沢グループの主張は通らなくなる。
小沢氏にとって不利にならないよう、9月の民主党代表選までこのまま何もしないという、
輿石さんの思惑通りにいま、動こうとしているのである。
そうした背景には、4月26日に予定されている小沢さんの判決がある。
もし無罪の判決が出れば、小沢さんは晴れて9月の代表選に出馬できる。
小沢さんにしてみれば「最後のチャンス」である。
そのために輿石さんは、小沢さんの邪魔になることは一切したくないと思っている。
消費税増税関連法案が可決されること、そして何よりも総選挙をもっとも恐れているのである。
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