参議院選挙、自民党の圧勝に終わった。52.61%という投票率の低さが象徴しているように、非常につまらない選挙だった。では、なぜつまらなくなってしまったのか。
経済問題、TPP問題、原発問題、そして外交や社会保障など、本来、争点はたくさんあったはずだ。それなのに、野党が与党・自民党に対抗できる政策を打ち出せなかった。その結果、野党は、単なる自民党の「亜流」になり下がってしまったのだ。だから争点のはっきりしない、つまらない選挙になってしまった。
もちろん、経済ではアベノミクスが、「今のところ」成功している、という要因は大きいだろう。折しも政府は、7月の月例経済報告で景気の基調判断を「自律的回復に向けた動きもみられる」と発表している。3カ月連続で上方修正したのだ。「回復」という表現が使われたのは、2012年9月以来、実に10カ月ぶりである。これは、選挙直前の好材料だったといえるだろう。
しかし、これまでの経済の好調は、いわば「期待値」だ。安倍政権にとって、参院選後こそがさまざまな問題の正念場である。TPPの交渉参加も、ついに今月23日に実現している。このTPPと密接に関係してくるが、アベノミクスの成長戦略、構造改革でもっとも重要な産業は農業だと僕は思っている。高齢化が進む日本の農業は、このままでは衰退するばかりだ。しかし、実は日本の農産物は世界でも高い評価を得ているのだ。
リンゴのフジ、イチゴやお米……。味といい、見た目の美しさといい、日本人の繊細な感性で作られた農産物は、外国でつくられたものとは、ひと味もふた味も違う。十分に国際競争力を持っている。
世界で十分に競争できるはずの農業を輸出産業に変えるには、何が必要か。それは、農業の大規模化である。いま、株式会社の農業への参入は、特区のみで認められている。拙著『竹中先生、日本経済 次はどうなりますか?』(アスコム刊)の中で、産業競争力会議のメンバーである竹中平蔵さんは、「日本の農業はオランダがモデルだ」と述べていた。
オランダの人口は1670万人、面積は約4万平方キロメートルで、日本のおよそ9分の1の広さしかない小さな国である。けれど、農産物の輸出はアメリカに次いで、世界第2位なのだ。ハイテク技術を駆使した温室などを活用しているからである。竹中さんは言う。「『輸出農業特区』を作れないか、と考えています。輸出のためだけにするから、農業への株式会社の参入を認めてくれないかと」
今後のTPP交渉は、当然重要なものになる。そのためにも安倍さんは、腰を据えて経済に取り組むべきだ。経済問題に専念するためにも、憲法問題は、ひとまず置いておく。そして、安倍さんはそのことを十分わかっていると僕は信じているのである。