人口減少、高齢化が進む日本で、地方が抱える問題はどんどん深刻化するといわれる。
僕は講演で日本全国をまわっている。そこそこ大きいと思われる地方都市にも行くが、その駅前でも、いわゆる「シャッター通り」が多い。また農業従事者も、平均年齢は65歳を超えている。「限界集落」という用語も、耳にすることが増えた。
けれど、知恵と行動力があれば、どんな不便な土地でもチャンスはあるし、可能性が広がっているはずだと僕は思っている。
岡山県の真庭市は、鳥取県との県境に位置する。いわゆる過疎地域のひとつだ。その真庭市に、木材業を営む銘建工業株式会社はある。木材業といっても、一般的な木材ではない。「集成材」を中心に販売しているのだ。
集成材とは、原木を加工し、貼り合わせた木材のことである。寄せ集めのようで、印象が悪いかもしれないが、そんなことはない。従来の木造建築では難しかった、大きな構造物を作ることもできる。
銘建工業の社長、中島浩一郎さんは、「これからの木材は集成材が中心になる」と話す。斜陽産業といわれる林業において、新たな付加価値を生み出し、生き抜いているのだ。
銘建工業のすばらしい事業が、もうひとつある。集成材を生産するにあたって、どうしても木くずが出る。その廃材を使って、発電事業を始めたのだ。いわゆる「バイオマス発電」である。
銘建工業は真庭市などと共同で、「真庭バイオマス発電」を設立した。2015年4月の稼働を目指す。発電規模はバイオマス発電としては国内最大の1万キロワットになるという。廃材利用で発電すること自体もすばらしいが、地域に新たな雇用を生み出す。
真庭市は、この事業で活気づくに違いないだろう。これはひとつの例にすぎない。全国各地の市町村には、このような何かしら事業の「種」があるはずだ。だが、そのためには「外」からの視点が必要だと僕は思うのだ。
当たり前だと思っているため、気づかないことでも、客観的な目で見ると、その価値に気づくことがある。そういう意味では、一度故郷を離れた人、よその地域からやって来た人が、キーマンになる可能性が高い。客観的な視点を入れるという意味で、地域交流が大事になるのではないか。
地方の過疎化、少子高齢化など、マイナス面ばかりが報じられている。だが、それだけでは何も変わらない。そしてまた、行政に頼ってばかりいても問題は解決しないだろう。真庭市の試みは、官民共同ではあるが、銘建工業が66%出資している。つまり、主導は「民」だ。
どの街にも必ず「種」はある。必要なのはアイデアと、そして「官」に頼らずに、住民自らが行動することだ。一つひとつの地方が何かを生み出していくようになれば、日本全体も活気づいていくだろう。僕は、そこに日本復活の「種」を見出すのである。