1月23日、東京都知事選挙が告示された。前知事の猪瀬直樹さんが、金銭問題で辞職する事態を受けた選挙だ。世論調査によると、元厚生労働相の舛添要一さんが、元首相の細川護煕さんをリードしているようだ。
細川さんは、原発問題について「即原発ゼロ」を表明した。この点について、細川陣営内ではかなり論議があったと聞いている。「即原発ゼロ」が現実的でないことは、細川陣営もよくわかっているからだ。だが、ゆるやかな「脱原発」では、「即原発ゼロ」の立場をとる、小泉純一郎さんの支援が受けられない。つまり、「非現実的」という理由で離れていく票より、細川さんと小泉さんという元首相のツーショットによって増える票の方が大きいと読んだのだ。選挙運動が始まり、小泉節が炸裂すれば、細川さんは、舛添陣営を脅かすことになるだろう。
ただ、細川さんはスネに傷を持つ身である。首相在任中の1994年、佐川急便から1億円を借り入れていた、という件で追及されたのだ。細川さんは「全額返済した」と弁明しているが、なんとも心もとない。そもそも今回の都知事選は、前知事の猪瀬さんが徳洲会から「借金」をして辞職したため、行なわれるものだ。釈然としない都民も多いだろう。
一方の舛添さんは、自民党の支援を受けている。ただ、舛添さんは、2010年に自民党から除名処分を受けた。除名処分にしておきながら、支援する自民党はどうかと思う。
もうひとつ僕は、都知事選に対して、おおいに不満に感じていることがある。候補者の年齢が全体的に高いのだ。細川さんは76歳、舛添さんは65歳だ。ほかに元航空幕僚長の田母神俊雄さんは65歳、元日弁連会長の宇都宮健児さんも67歳。
もちろん、高齢だからダメだとは言わない。僕だって今年で80歳になる。充分に高齢者であるが、まだまだ現役だ。だが、ここまで候補者の年齢が高いと、日本に人材はいないのかと不安になる。
そんなことを考えていたら、22日、家入(いえいり)一真さんが突如、立候補した。家入さんは35歳である。僕は、彼と何度か会ったことがある。とてもユニークな若手起業家だ。
家入さんの活動で特筆すべきことは、なんといっても「リバ邸」だろう。現代の若者たちの駆け込み寺だ。彼自身、いじめにあったことが原因で、高校を中退し、3年間、引きこもっている。そんな経験もあって彼は、会社を辞めたいという人や、居場所がない若者のために、シェアハウスを作り、仕事を紹介する、という活動をしている。
家入さんの選挙活動を支援しているのは、ホリエモンこと堀江貴文さんだ。選挙活動はネットで行うという。彼のような若い人が、これからももっと出てくるようになればおもしろい、と僕は思っている。
東京都知事選で、原発問題が大きな争点になるのはわかる。東京は日本一の電力消費地だからだ。ただ、原発問題だけが取り上げられ、他の政策がほとんど議論されていないのではないか、という懸念を僕は持っている。防災問題、景気問題、福祉問題など、議論しないとならない課題は東京には山積みなのだ。世論調査では、まだ4割以上の人が投票先を決めていないという。自分が選択したい一票を投じるためにも、ぜひ投票所に行ってもらいたい。