ウクライナ南部クリミア自治共和国にロシアが軍事介入しようとしている。実効支配へと動いているのだ。このロシアの動きに対して、アメリカやEU諸国が抗議している。
ロシアの主張は、「あくまでもロシア系市民を守るため」ということだが、そんなわけはないだろう。欧米諸国にすれば、「ポーランドと同じではないか」となる。1939年、第二次世界大戦の初期、当時のソビエト連邦は、ドイツ軍に続いて軍隊をポーランド領内に侵攻させた。その際の大義名分は、ポーランドにおけるウクライナ系とベラルーシ系の住民の保護だったのだ。
このクリミアでのロシアの動きに対して、欧米先進国は激しく反発している。まず6月にロシアのソチで開催が予定されているG8サミットの準備中止を決定したのだ。さらにアメリカからは、「ロシアをG8から追放する」など、制裁すべしという意見も出ている。冷戦終結後以来、国際社会が直面する最大の危機といってもいいかもしれない。
そもそもの発端は、2月下旬、ウクライナの首都キエフや西部で大規模な反政権デモが起きたことだ。そして親ロシア派の政権が崩壊し、ヤヌコビッチ大統領は国外脱出した。一方、政治犯として収監されていたティモシェンコ元首相が復活し、親EUの新政権が動き出すかと思われた。だが、ロシアが黙っていなかったというわけだ。
クリミア自治共和国は、人口約200万人のうち6割がロシア系だという。親ロシアの土地柄なのだ。そして地図を見れば、国が位置するクリミア半島は、黒海に突き出すような形になっている。そして、ケルチ海峡を挟んで目と鼻の先にロシアがあるのだ。つまり、ロシア側から見ると、クリミア半島はヨーロッパ側への玄関ということになる。なるほど、ロシアが実効支配したいと思うわけだと、考えざるをえない。
ここで問題になるのは、日本の「立ち位置」だろう。現在、アメリカとの関係は微妙だ。中国、韓国ともうまくいっていない。そんな日本にとって、外交的に順調な関係を築いていた大国がロシアなのだ。安倍首相は2月にはソチを訪れ、プーチン大統領と会談もしている。
現在、日本とロシアの間には、2つの非常に大きな問題がある。ひとつは、いうまでもなく北方領土問題だ。もうひとつは、天然ガスのパイプライン建設である。このパイプライン建設については、プーチン大統領も了解しているといわれている。
今の日本にとって重要な隣国であるロシアに対し、どのようにふるまうべきなのか。日露関係も大切だが、アメリカはもちろんEUとの関係も、大切であることは間違いないのだ。
では、どうやって両者の間に入って、日本の存在感を示すことができるのか。ロシアとの距離が近いということは、有効なカードを日本が持っているということでもある。いまこそ日本、安倍晋三首相の外交力が問われていると言ってもいい。安倍首相の胆力の発揮を期待したい。
近現代の戦争は情報戦が重要になる。今回のウクライナ問題を見ているとやはり欧米の情報力がロシアを圧倒しており、その結果日本のマスコミも上記の田原氏のような欧米寄りの論調になっている。ここで思い出すべきは、日本は70-80年前、情報戦に敗れて主権を失った経験があるということだ。間違った情報により間違った政策を取ると同じ道を歩むことになる。
今、日本にとって重要なことは何だろう。田原氏の言うように欧米とロシアの間に入って存在感を示すことだろうか?「話し合い」しかできない今の日本が踏み込める問題だろうか?
全く逆だろう。両者の紛争に巻き込まれないことが最も重要だ。そしてこの状況下でロシアと中国が接近しないよう注視すること。ロシアは北方領土、中国は尖閣諸島において、対日政策で協力関係に動きつつある。日本が世界を見るときはいつも中国を懸念しなくてはならない。
気がつけば、自民党の政治家は世襲ばかり
安倍内閣もですが皇室と縁戚のある人ばかり
格差社会どころか階級社会になってたんですね。
日本の立ち位置は結構難しい。
「特集ワイド:ウクライナ情勢と安倍外交、佐藤優氏に聞く 露がクリミア編入なら、北方領土「解決」空文に」(毎日)
http://mainichi.jp/shimen/news/20140313dde012010004000c.html
は、参考になる。(なお、そこに書かれているように、北方領土がすべて帰ってきても、何らかの理由があればクリミアと同じくロシアが再び北方領土に介入する懸念も出てきたと思う)
それに加えて、エネルギー問題(天然ガス)がややこしい。
日本が米露の間に入っても、日本は天然ガスの輸入国を分散させて競争させるのが元々の戦略だから、ロシアからもアメリカからも頼りにはされないだろう。
安倍首相はアメリカからの自立をしたいばかりに、ロシアの天然ガスをアメリカの天然ガスと天秤にかけたかったのだろうが、その目論見は崩れた。日本は結果的に外交的に孤立し、今は韓国との関係修復を急ぎ、日米同盟の再構築を図らねばならないところに追い込まれている。
しかし、これは安倍政権にとって「授業料」である。日米、日韓、日中関係を修復しながら、日露関係も維持していくという、孤立外交から全方位外交へと転換できて初めて発言力が高まることを学ぶだろう。
なお、日韓首脳会談が当面のカギであるが、河野談話を検証しながらでは外交にならない。両国とも国内事情があるが、首相が継承すると言った以上、ここは日本が手を引くべきである。