ついに、というべきだろうか。今月14日の臨時閣議で、安倍晋三内閣は、自衛隊法改正案、重要影響事態法案、船舶検査法改正案、武力攻撃事態法改正案、国連平和維持活動協力法改正案など、10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、新法の「国際平和支援法案」を閣議決定したのだ。15日には衆議院に提出され、これから審議に入ることになる。
いま、日本の安全保障は、大きな転換点を迎えている。ここまで書いておきながら、僕自身がいやになるほどの難しい言葉が並んでいる。名称もややこしいが、それ以上に内容もわかりにくい。なぜもっとわかりやすく、国民に説明しないのだろうか。
先日、「激論!クロスファイア」で、民主党代表の岡田克也さんを迎えて、その問題点を大いに議論した。たとえば「周辺事態法」が、「重要影響事態法」という名称に変更されるのだ。では、名称以外に何が変わるのか。簡単にいえば、この変更によって、地域の制約がなくなる。つまり、自衛隊は地球の裏側まで出動できるようになるのだ。
法律の性格が変わるだけではない。「重要影響事態法」の頭にある「重要」という言葉もよくわからない。「重要」とは何か。どんなときなのか。新法の「国際平和支援法案」は、国際平和のために活動する他国軍を、後方支援する恒久法である。自衛隊の派遣について、「国連決議」を要件にしている。この点について岡田さんは、「もし国連決議がない場合でも、『重要影響事態法』に移行させることが可能だ」と、指摘している。つまり、国連決議がない場合の自衛隊派遣の抜け道に、「重要影響事態法がなり得る」というわけだ。
今回の法案は、わかりにくいことだらけである。ほとんどの国民も、よくわかっていないのではないか。「日本人の命と平和な暮らしを守るため」と政府は強調する。だが、「なぜ、いまなのか」という明確な理由は、一切伝わってこない。
僕はこの問題について、何度でもいう。安倍首相は、自らの手で日本を「普通の国」にしたいのだろう。しかし、日本が「普通の国」になることのリスクや「痛み」を、国民にきちんと説明しなければならない。当然、そのことは安倍首相もよく承知しているはずだ。
その上で、本当に必要なのであれば、国民は必ず納得すると僕は思うのだ。自民党は法案成立を急いでいる。だが、野党はここで踏ん張って、時間をかけてみんなが納得するまで、何度も何度も議論してほしい。間違っても、一国会で決まるようなことがあってはならない。