元NHKの今井彰の書いた「ガラスの巨塔」という話題の小説を読んだ。
非常に面白かった。
今井は「プロジェクトX」のプロデューサーで、
一時はテレビ界の最高のプロデューサーとしてもてはやされた人物であった。
芸術祭賞をはじめ、数々の賞を受賞している。
僕自身、テレビ界で生きているので、
今井の気持ち、苛立ちや悔しさなどが良くわかる。
今井は地方局出身で、
湾岸戦争で捕虜となったアメリカ兵の家族を克明に取材した。
その粘り、執拗さには頭が下がる。
この番組をきっかけに彼は認められ、
大ドキュメンタリーをいくつも物にする。
そして「プロジェクトX」のプロデューサーとなり、
会長にまで深く信頼されるようになる。
ところが、その会長が失脚して
今まで彼を賞賛し協力してくれた人間達が
一転してこぞって彼の足を引っ張る。
僕は、こんな大ヒット番組に関わった事はなく、
局のトップと特別の関係になった事もないが、
これまでの絶賛が、嫉妬と非難に変わり、
それが大渦巻となるのはよくわかる。
結局、彼は追い詰められてNHKを辞めるのだが、
小説と銘はうっているがほとんど実話であり
また、実話でなければ彼が書く意味がない。
彼は気を悪くするかもしれないが、
彼が作った最高のドキュメンタリーだと思う。