田原総一朗です。
2月29日、3月1日、
政治倫理審査会が開かれた。
岸田首相は、
よく出席したと思う。
だが、大騒ぎしたわりに
真相解明にはほど遠い、
というのが多くの国民の実感だろう。
そもそも、
政治倫理審査会には強制力がない。
審査対象の議員は
出席を拒否してもよく、
2009年、対象の議員だった
鳩山由紀夫氏は欠席している。
しかも議事録も残さず、原則非公開。
そもそも、こんなにもゆるい
政治倫理審査会という場で、
国民が納得すると考えるのがおかしい。
国民を甘く見ている
としか思えない。
僕は、政治とカネの問題を、
長年取材してきた。
ロッキード事件、リクルート事件……。
その中で、
今回の政治資金パーティーの裏金問題は、
やや色合いが違うと思っている。
それは、大きな罪の意識もなく、
議員たちの間に
慣例としてはびこっていたことである。
言ってみれば「無自覚の病」だ。
ほとんどのメディアも、
2022年11月に
「しんぶん赤旗」で報じられるまで、
注目していなかった。
僕が司会を務める
「朝まで生テレビ!」、
そして「激論!クロスファイア」で
多くの論者と大激論した。
なぜ多くのメディアは、
この問題に気付けなかったのか。
政治資金報告書というのは、
とにかく膨大な量があり、
チェックに大変な時間がかかるという。
実際、今回の問題を告発した、
神戸学院大教授の上脇博之教授も、
大変な時間と労力をかけて、
調査したそうだ。
なぜそんなにもややこしいのか。
なんと政治資金報告書は、
デジタル化されていないのだという。
「PDF」というファイルの形なので、
ネットで見ることはできても、
データをチェックするには紙と同じように、
一枚一枚見ていくしかない。
デジタル化されていれば、
たとえば寄付した団体や企業名を入れて
検索すれば、一目瞭然で寄付先がわかる。
もはや、国は、
わざとデジタル化せず、
国民の目をそらそうと
しているとしか思えない。
また、政治家本人が会計責任者となって、
責任を負う「連座制」導入も、
検討すべきだという意見も出た。
今の法律では、
会計責任者である秘書だけが起訴され、
政治家本人は責任を問われない。
だから政治家は、
「秘書がやった。私は知らない」となる。
そこで、日本維新の会は、
党則として、
政治家本人が会計責任者
と決めているという。
ただ「連座制」の前に、
「連座制とデジタル化はセットにすべき」と、
ビデオジャーナリストの神保哲生さんは言う。
なぜか。
政治資金報告書への記載は、
膨大な量があるため、
人的ミスはつきものだ。
例えば、検察が狙いをつけた
ある政治家の報告書を、
徹底的に調べ上げ、
「政治資金法違反」の罪に問う、
ということもあり得る。
だから、まずデジタル化を行い、
国民全体に「見える化」をして、
「齟齬があったらすぐわかる
体制を作るべき」というのが、
神保さんの意見だった。
僕は神保さんに同意しながら、
「陸山会事件」を思い出した。
小沢一郎氏への、
土地資産疑惑によって、
秘書3人が政治資金報告書の、
「虚偽記載」で有罪になった。
小沢氏自身は無罪だったが、
僕は今でも、
そこに「小沢首相」を実現させたくない、
大きな力が働いたと思っている。
国民にはマイナンバーや、
インボイス制度を進めながら、
なぜ自分たちのデジタル化はできないのか。
これでは国民の政治不信は、
深くなるばかりではないか。
政府は、政治資金の使い途を、
すべて「見える化」すべきだ。
こうした意見に対し、
岸田首相は、
「公開したら政治活動の自由が
損なわれる」と答えた。
国民が収入に対し、
税金を払っている中、
そもそも政治活動費は非課税である。
その意味を首相は
考えたことがあるのだろうか。
私利私欲ではなく、
国民のための政治活動に
使う費用だからこそ、
「非課税」なのである。
公開できない政治活動など、
やめるべきなのだ。