田原総一朗です。
石破茂内閣が誕生した。
石破さんとは、
取材や対談などで、
数えきれないほど
議論を重ねてきた。
勉強家で、政治に対して
熱い思いを持っている。
期待している政治家の一人だ。
ところが、である。
発足早々、
首をかしげることの連続なのである。
まずは衆議院の解散だ。
総裁選前、石破さんは、
「与野党で十分論議してから解散する」
と言っていた。
ところが、9月30日、
早々に解散を明言。
首相就任前なのだから、
明らかなフライングだ。
おそらく、与野党が議論すれば、
「裏金問題」で自民党は、
どんどん不利になる。
その前に選挙をしてしまいたい、
という党内の思惑があったのだろう。
総裁選の決選投票では、
高市早苗さんと大接戦。
党内基盤が弱い石破さんとしては、
のまざるを得ない状況が
あったのかもしれない。
その「裏金問題」の議員については、
当初、公認の方向と伝えられた。
正直僕は、
「石破さんはどうしてしまったのか」
と思っていた。
だが、10月6日に、
「党の処分が継続中なら、
政治倫理審査会で説明した場合を除き、
非公認にする」と表明。
これはまったくもって、
当然だと思う。
そもそも岸田首相が
退陣せざるを得なかったのは、
裏金問題が招いた、
国民の自民党への不信感が
強かったからである。
あとを引き継いだ石破さんが、
決着をつけなくてどうするのか。
昨年9月、石破さんは、
僕が若い世代の出席者と
議論をするイベント、
「田原カフェ」にゲストとして
来てくださった。
「石破さんはまじめ過ぎて、
仲間作りがうまくない」
と僕が言うと、
石破さんは、こう返した。
「自分の主義信条に
反することをやってまで、
生きていたくないので」
その時僕は、
「うん、これが石破さんだ」
とうれしくなったのだった。
他の「石破語録」も
あらためて紹介したい。
――総裁選に4度出馬したのはなぜ?
「総理は手段だから。
総理じゃないとできないことがある。
『日本の国ってこうあるべきじゃないですか』
と最後に問いかけることができるのは
総理大臣じゃないかと思ってる」
――日本の投票率について
「選挙に行くのは、
主権者の権利である、
と同時に義務でもある。
国や住んでる自治体が、
『どうなろうと知ったことではない』という人が
5割以上もいる国が、
まともな国になるはずがない」
――かつて、故安倍元首相に対抗し、
総裁選に出た時の心情について。
「それは(安倍さんから)
好かれたほうがいい。
副総理をやってくれと
言われてたからね。
でも、おかしいことをおかしい、
と言えない組織は不健全でしょう」
いずれも、ほぼ1年前の
石破さんの発言である。
若い世代30人ほどの前で、
熱く語ってくださった。
筋が通っているし、
考えは今も変わらないはずだ。
かつて、「安倍一強」の自民党で、
イエスマンだらけのなか、
批判すべきはきちんと批判した、
石破茂という人間を僕は信じる。
経済、安全保障面でも、
問題は山積みだ。
厳しい船出ではあるが、
石破首相に期待したい。