田原総一朗です。
石破内閣発足後、
初の国政選挙となる
参議院選挙が、
7月に行われる。
5月28日の「田原カフェ」では、
選挙ライターの
畠山理仁さんをゲストに
お招きした。
畠山さんは、
早稲田大学の学生時代、
選挙運動のアルバイトをした時、
「こんなにも人間の本性が
むき出しになるところはない」と、
選挙の現場に魅了され、
日本全国の
あらゆる選挙を取材する。
畠山さんの活動は、
映画『NO選挙、NO LIFE』にもなった。
1999年の東京都知事選のときのこと。
雑誌記事の取材で、
候補者19名全員に取材しようとしたところ、
そのうち3名にはどうしても会えなかった。
その3名は選挙活動そのものを、
していなかったのだ。
畠山さんは、
「そんな立候補の仕方もあるんだな」
と知ったのと同時に、
立候補したのになぜ活動しないのか。
また、そういう3名にも
得票があるという
「選挙の不思議」に、
ますますとりつかれていく。
畠山さんは、
結果よりも過程、そして、
選挙というイベントにおける
「人間」をとことん取材する。
その視点がとてもおもしろい。
たとえば、
2024年11月に行われた
兵庫県知事選挙。
パワハラ問題で失職した、
斎藤元彦氏が再選した。
その背景には、
NHK党の立花孝志氏の
前代未聞の「立候補」があった。
この結果について畠山さんは、
「動きを作りたい、
作ろうと思う人にとっては
可能性を感じる出来事。
『世論は作れる』という、
自信を深めただろう」と話す。
しかしそれは同時に、
とても「危うい」とも言う。
畠山さんは、選挙現場で、
斎藤氏を支持する
多くの年配の方に、
直接取材した。
「情報源はネット、
中でも立花孝志氏のYouTube。
でも、周りの人とは
政治の話をしない」
と答える人がほとんどだった。
既存のメディアを避け、
限られた情報を繰り返し見て、
「真実に違いない」と思い込む。
一方でリアルでは、
人と話をしないため、
どんどん視野が狭くなっていく……。
そんな背景が見えたという。
しかしもちろん、
SNSによる選挙運動が
すべて悪いわけではない。
むしろ畠山さんは、
もっと活用すべきだと主張する。
「自民党は固定の支持者で、
しっかり固めている。
それをひっくり返すのは難しい。
巨人ファンを阪神ファンにするようなもの」。
だから、
「『今まで選挙に興味なかった人を
SNSやネットでかき集めて、
味方になってもらったら
我々は勢力を伸ばせるんだ』
ということをする党が出始めた。
立憲民主党などが
もっとそこに力を入れていれば、
政権交代は起きやすく
なるのではないか」。
有権者に対して
畠山さんは、
「自分の目で候補者本人を
たしかめてほしい。
本人を見れば、
この人に1票預けてもいいかどうか、
確信が持てる。
できれば1人に縛られず、
複数の候補者を
比べてみてほしい」と言う。
印象的だったのは、
畠山さんの
「選挙を楽しんでほしい」
という言葉だった。
「演説を見に行ったり、
活動を手伝ったりすると、
めちゃくちゃ楽しい」と語る。
なるほど、僕たちは、
「義務だから投票すべき」
「投票しないのはけしからん」
などと言いがちだったが、
「楽しもう」という視点が
欠けていたかもしれない。
新鮮な気持ちになった。
その他、
選挙期間が短いこと、
報道規制のため、
選挙期間の情報が
少なくなってしまうことなど、
日本の選挙の問題点も
たくさん浮かび上がった。
しかし、次の参院選で、
まずは「畠山流」選挙の楽しみ方を、
やってみようではないか。