田原総一朗です。
8月30日の「朝まで生テレビ!」は、
「“今起きている戦争”と日本の平和」
をテーマに、徹底議論をした。
8月15日に79回目の終戦記念日を迎え、
来年は戦後80年である。
あの悲惨な第二次世界大戦があっても、
今なお世界で戦争は絶えない。
そして、台湾有事という恐れがある。
日本は、とてもグレーな国だ。
憲法では戦力保持を否定しながら、
自衛隊というれっきとした「軍隊」を持つ。
核を持たないと言いながら、
核兵器保有国のアメリカと同盟国だ。
この「あいまいな日本のあり方」でいいのか。
僕は出演者のみなさんに、
この問いを投げかけた。
「現実の国際政治において、
日本のポジションというのは、
ユニークでありながら現実的。
だから平和が維持されているともいえる。
『はっきりさせる』ことが正しいかどうか、
ほんとうに国民は考えないといけない」
元防衛大臣の森本敏さんは、
こう語る。
たしかに戦後日本は、
「あいまいさ」ゆえ、
つまりアメリカが作った憲法を盾に、
戦争に巻き込まれなかったといえる。
しかし、ジャーナリストの神保哲生さんは、
「あいまいゆえに、
なし崩しになるリスク」を指摘する。
「あいまいというのははっきりした線がない、
それを超えたとしても、
『ほら超えたじゃないか』
とならない可能性がある。
そのためにしっかりとした線を
引くのかという議論はあっていい」。
元テレビ朝日の武隈喜一さんは、
「自分たちの国を
どういった形で守っていくのか、
あいまいなままでいいのか。
台湾有事などと全く別に、
日本のこれからの安全保障をどうしていくのか。
国民的に考えていかなければいけない」と言った。
「核抑止力」についても議論になった。
長崎出身被爆三世で、
KNOW NUKES TOKYO代表の
中村涼香さんはこう語る。
「冷戦史についての本、
『ロング・ピース』には、
冷戦下で核戦争が
起こらなかった一つの要因として、
『為政者が核兵器のもたらした、
非常に痛烈な結果をまのあたりにしたからだ』
ということが書いてあります。
『まのあたりにした為政者』がいなくなっていく、
これからがすごく危ういと思っている」
視聴者の皆さんには、
「日本が戦争に巻き込まれると思うか」
というアンケートを取った。
すると、なんとほとんどの回答が、
「巻き込まれると思う」だった。
しかし僕は、断固日本の未来は明るい、
「戦争に巻き込まれない」と信じている。
日本人、特にマスコミは、
悲観論が好きなところがよくないと思っている。
このアンケートについて、
出演者の新外交イニシアティブ代表の
猿田佐世さんから、
こんな意見が出た。
「『巻き込まれる』という設問が好きではない。
台湾に麻生さんが行ったり、
フィリピンとアメリカで演習をしたり、
日本がそれを『選択』している」。
「巻き込まれる」という言葉は、
「『責任がないのにそうなっちゃった』
みたいなニュアンスだ」
この意見はとても面白かった。
たしかに、戦後日本の「あいまいさ」が、
このアンケートの設問にも、
出てしまっていたように思う。
産経新聞の乾正人さんも、
「『巻き込まれる』という表現に、
戦後日本のよくない点が出ている」
と指摘した。
いったいこれから日本は、
どうやって自国を守っていくのか。
中村さんの言うように、
核兵器や戦争の恐ろしさを、
「まのあたりにした為政者」は
確実にいなくなっていく。
20代の中村さんはこうも言った。
「過去の記憶をし直す作業が大切。
過去の体験をリアリティをもって
疑似体験できる技術もある」。
これにはなるほどと、感心した。
あの戦争の記憶を持つ
僕ら世代は去っていき、
近い将来確実に、
戦争を知らない人ばかりになる。
それはいたしかたないことだ。
戦争を知らない世代に、
戦争や核兵器の恐怖を疑似体験させること。
それはたとえばこれまで、
本や映画、テレビの役割だった。
しかし、たしかに今は、
最新のVR技術などもあり、
よりリアルに疑似体験できるだろう。
猿田さんや中村さんの意見は、
僕が思ってもいないことだった。
戦争を知っている世代と、
戦争を知らない世代が、
席を同じくして、
生で語り合うよさをあらためて感じた。
「朝まで生テレビ!」は、
10月からBS朝日、
毎月最終日曜19時~に引越しする。
いよいよ9月27日(金)は、
深夜としては最後の「朝生」。
奇しくもこの日は、
自民党総裁選開票日。
将来の日本を考える、
熱い夜にしたいと思う。
ご覧いただけたら幸いです。